12平均律と53平均律からの純正律への近さの比較  12平均律(単に「平均律」という場合はこれを指す)と53平均律からの純正律への近さを 周波数の近さによって知覚的に評価してみよう。 周波数が異なる等振幅の2つの正弦波を加えると、三角関数の公式から、 周波数が2つの平均周波数の正弦波と、振幅が元の振幅の2倍で周波数が2つの周波数の差の 半分の余弦波の積になることが分かる。従って、2つの周波数が近い場合には、 それらの平均周波数の正弦波の振れ幅が、周波数差の頻度で最大になる波になることになる。 したがって、2つの周波数がきわめて近い場合には、平均周波数が元の2つの周波数と ほぼ同じ波で、振幅が周波数差の頻度でゆっくりと0と最大とを繰り返すように聞こえる。 これが「うなり(ビート)」である。  いくつかの音律による長調の音階(「ド」を264Hzとした)をファイルに入れてある。 音階に使った音は成分が基本波1本だけのもの、つまり正弦波による音である 個別に聞くと違いがそれほど分からないが、足し合わせて聞くと、周波数に差がある音では 周波数差に応じた速さのうなりが聞こえる。 ピタゴラス音律と (どちらが高いかは、固定のうなりからでは分からないが、弦楽器の調律の際は、一方を 上下させるのでうなり頻度の増減によって分かる。)  純正律と他の音律との差を聞けるように音ファイルにしておいた。 うなりを数えられるように、1音あたり4秒あるいは5秒とした音階も入れてある。 図は左からドレミファソラシドと並んでいる。下の「ド」を基準としているので、 それにはどれもうなりがない。上の「ド」の周波数は,ピタゴラス音律と中全音階で 下の「ド」の周波数の2倍になっていない. 12平均律と53平均律を比べると、12平均律では純正律との差が「ミ」、「ラ」、「シ」で 大きいが、53平均律ではそれが小さくなっているのがわかる。 フォルダー【「ミ」と「ラ」】  12平均律で純正律からの差が大きい「ミ」と「ラ」について、別フォルダー【「ミ」と「ラ」】に、 それぞれの音律での「ミ」と「ラ」について、うなりの様子がよくわかるように時間軸を拡大した図も 入れておいた。   【注】 12平均律: (3/2)^12が2^7に近い(5度を12回上がると7オクターヴ上になる)ことを利用して、 オクターヴ(周波数で2倍)を対数的に12等分(等比的に12に分割)して得られる音律. 53平均律: (3/2)^53が2^31に近いことを利用して、オクターヴを対数的に53等分し、そのうち 純正律の周波数比に近い21箇所を使う音律。 これによって、「ド」を基準にした場合に12平均律で純正律からのズレが大きかった長調での 「ミ」、「ラ」、「シ」が純正律に近くなり、短調の「レ」に近い高さもあるので、 すべての和音の協和性が改善できる。53平均律で純正律から最も遠く離れるのは「ド」から 3全音の「ファ#」であるが、この高さは「ド」を調内音とする調で和音構成音として使う ことがほぼないので、多少ずれても差し支えないと考える。